【往還集141】8 漆器

「コスモス」は短歌結社誌ですが、短歌に直接かかわりのないエッセイも連載されています。
片柳草生さんの「道具さんぽ」。
さまざまな工芸品が写真入りでとりあげられており、私にとって必読のページです。
今号(2018年3月号)は「塗りもの」。天然木に漆を塗ってしあげた器について語られています。

「木と漆は、ともに天然の植物素材。正直な仕事が施された器は、手や唇を触れたときに、えもいわれぬ優しさが伝わる。それが一番の魅力だ。」

この一文で子ども時代が甦りました。
前沢に住んでいたとき、隣が「秋田屋」という塗り師屋さんで、何度ものぞきに行きました。
職人さんが「漆に負げっから離れで見でろよ」といいながら、何度も塗り重ねる過程を見せてくれるのです。
数日おいたあと、今度は木賊(とくさ)で磨きあげます。
こういう貴重な現場を、何度もじかに見てきた。今頃になって、気づきとはーー。
(2018年2月21日)