成人の日の1月8日、振袖の販売・レンタルの業者がなんの連絡もなく姿をくらます事態が生じました。
そのため晴れ着を手にできない新成人が300人規模で続出。
こういうペテンは当然許してはならない。同時に近年の成人式について再考するチャンスでもある。
成人の日に限って、振袖姿がぞろぞろと街を行き来し、会場に集合するのは、どう見ても奇異。
時代劇によく出てくる大奥のシーン、あれを連想させる。
たしかに和服は美しい、けれど大集団となれば、怖い。
しかも「この日には振袖でなければ
とマインドコントロールされていることも、不気味。
レンタル代もきついため、参列しない人だっている。
会場のほとんどが振袖のときに平服で参列するのは、しっかりした考えがあればともかく、きっとみじめな気分になる。
かくまで爛熟しきった成人式はいったん廃止して出直してはどうかというのが私の考えです。
(2018年1月10日)
月: 2018年1月
【往還集141】2 「あの空文庫」
いつか読みたいと思ってきた本が、書庫には何十冊となく並んでいる。
赤茶けた学生時代の文庫本も。
昔の本はひどく活字が小さい。どうしても読みたいのは、費用をかけても拡大コピーすることになる。
けれどとてもこなしきれない。
リルケ『マルテの手記』、これは高校生のときに図書館で読んだ。けれど3分の1しかわからなかった。もう1度挑戦したい、高安国世訳とわかってから、なおさら。
ショーロホフ『静かなドン』、アラン『芸術論』、阿部次郎『三太郎の日記』、その他プルースト、チェーホフなどなど。
だのに時間は残酷、目の力は年々衰えていく。
もう諦めるほかないかと落ちこむ日々のつづいたある日、なんのまえぶれもなく閃きが生じました。
きっと死後の世界にも図書館はある、しかも言語の壁などない、完全共通語として。
図書館の名前も閃いた、「あの空文庫」。
私の気分は急に明るく、さわやかになったのです。
(2018年1月9日)
【往還集141】1 天然の作品展
散歩にでかけるときには小型のショルダーバックを携行します。
そのなかにいつも入っているのは「森の手帖」。
このごろは森の奥深くまで行くことが少なくなりました。クマの出没情報が絶えないゆえ。
それでも「いかにも森だなあ
という所まで入りこみ、スケッチしたり、句を作ったりします。歌はなぜかゼンゼン浮かんでこない。
1月に入って連日の雪。やっと快晴。
さて散歩に出かけよう。
まず公園を横切る。
そのとき、あれあれ!と目をみはりました。芝草の雪がとけはじめ、さまざまな形になっている。
キョウリュウ、クジラ、ウサギ、フネ、ヒコウキその他。
まるで保育園の展覧会のよう。
これはおもしろい、今日の森行きは休みにして〈雪もようスケッチ〉に切り換えよう。
なにしろこれは冬限定の展覧会。
こうしてつぎつぎに写しとっていったらたちまち50。
目玉も入れるとほんとに生き始めました。
(2018年1月8日)
【往還集140】40 野の花
前沢(現奥州市)は南から北へと細長い町並。そのの背後は低い山つづきで、登りきると一面に台地が広がっていました。戦後になって引き揚げ者が続出し、幾棟もの長屋が台地の一角に造成されました。転入してくる同級生もいます。多くが極度の貧困、弁当を持参することもできません。おひる時間には教科書で顔を隠しているか、校庭で遊んでいるかでした。ある日体育から教室に戻ってきた一人が「あれ、弁当がからだ」と叫びました。以来、たびたび弁当事件は起きましたが、とうとう犯人が見つかります。同じクラスのSさん。前々からさまざまな物がなくなるので、噂は立っていましたが、弁当は現行犯。当時私たちは登校時間の早さを競いあっていました。その日は自分が一番、と思ったらすでにSさんが。Sさんは野の花を廊下の竹筒に活けてまわっていました。いつも季節の花の飾られているわけがわかりました。
(2018年1月3日)
【往還集140】38 人類の発展・続
こうなると原発工事はおいそれとできなくなる。それでは儲けないので、国のトップが海外へセールスに出かける。原発のみならず核兵器はあちこちにあり、所有した国は廃絶へ向かおうとはしない。このような状況を目の当たりにすればいやでも「やがて人類は亡びる
と悲観せざるをえなくなる。ただし地球も亡びるわけでない。人類絶滅のあと、放射能にも耐える生物が出現し、地球史のほんの1頁に「人類史」を書き加えるかもしれない。ところが汚染された地球を脱出すべく、他の星を探したり、人造の星を造るという案もある。仮にそれが可能になったとしても、全人類が移住できるとは思えない。だれが移住するか、抽選するか、政治力・金力によるか、それともノアの方舟同様、神におまかせするか。だがまてよ、そのまえに問うべきは、「人類にはそこまでやる価値があるの?」だと思う。以上、新年の所感です。
(2018年1月1日)