【往還集140】31 国家とは

ヘーゲルの『歴史哲学講義』を読んでいることは、さきにも触れました。今頃になってヘーゲルを読むなんてといわれそうですが(事実私の読書力は昔から弱くてずっとずっと嘆いてきたのですが)、読み進めるにつれてその壮大な構想にはまりこんでいる昨今です。この書はベルリン大学の講義をもとにしたといいます。講義開始が1822年、日本でいえば1823年にシーボルトが長崎に来航、翌年にはイギリス船が来航という時代。だのにヘーゲルの視野は驚くばかりに広い。もっとも、処々に疑問がないわけではない。「歴史における理性とはなにか」の章に語られる国家観もそのひとつ。「国家とは、個人が共同の世界を知り、信じ、意思するかぎりで、自由を所有し享受するような現実の場です。」「人間のもつすべての価値と精神の現実性は、国家をとおしてしかあたえられない」ともある。この信頼に満ちた国家観!
(2017年12月19日)