「誤植は出版の華」と公言してきました。どんなに校正してもまちがいは出る。殊に最も信頼できないのは著者校。書き手本人には思いこみがあって、とかく見逃しが出てしまう。
そこで出版のプロに委ねることになりますが、完璧というわけにはいかない。それを知るゆえに誤植には寛容なのです。
ヘーゲルの『歴史哲学講義 上』(岩波文庫 長谷川宏訳)を読んでいたら、誤植の話が出てきました。
中国最大の叢書『四庫全書』を乾隆帝が刊行。
「誤植の訂正にあたる委員会は皇太子が委員長をつとめ、みんなが目をとおした作品はあらためて皇帝のもとにおくられ、あやまりがあればきびしく処罰されます。」
とあるではありませんか。
学問をこのうえなく尊敬した皇帝の逸話として紹介されているのですが、誤植があれば処罰とは、怖ろしや怖ろしや。
私の首はもう100、いやそれ以上飛んでいることまちがいありません。
(2017年11月23日)