原田勇男氏と玉田尊英氏の刊行している詩誌は「THROUGH THE WINND」。
その37号に原田氏は「三浦哲郎の文学碑と合唱曲・津軽の「四季」」の題で、『忍ぶ川』もとりあげています。
1961年に芥川賞を受賞した当初、私もこの作品に感銘を受けました。
三浦作品としては『白夜を旅する人々』が最高でしょうが、出世作ともいうべきこの一篇は捨てがたい。
たしか単行本を所蔵していたはずと書庫を探したら、新潮社版のがあった。
「私」が志乃と出会うのは料亭「忍ぶ川」。志乃は貧しい生い立ちの女性。結婚することになり、東北の実家へ案内する。
その初夜の艶めかしく、美しいこと。
近くの温泉へ行こうと汽車に乗ったとき、志乃は車窓から見える家を指差して
「うち!あたしの、うち!」
と叫ぶ。
1961年といえば自分は18歳、学生になったばかり。
あの日と同じ感動が再生されたのでした。
(2017年9月14日)