私は絵画の勉強を正式にやったことがないので、いつも疑問に思うことがありました。
それは裸婦をスケッチするということ。
ハダカの写真集ならいっぱいあるのだから、それでやればいいじゃないか、モデル代もかからないですむーー。実際、貧乏画学生は写真集でやる場合もあるようです。
ところが実物をまえに肉眼でとらえたときの深みは、やはりちがう。
ここにはどういう秘密があるのだろうと思案していたとき、陶芸家富本憲吉の一語
「模様より模様を造るべからず」
を知りました。石井僚一作品の鑑賞欄で今井恵子さんが引用しています(『短歌』2017年8月号)。今井さんはこれを座右銘にしているといい、さらに
「模様から造った模様と、実物のスケッチから造った模様の違いは、些事に見えてとても大きい。」
と結んでいます。
「写真をもとにするか実物をもとにするかの差もこれなのだ」とやっとわかりました。
(2017年8月20日)