NHKスペシャル「禁断の王国・ムスタン」がやらせ、つまり虚偽だとして朝日新聞のトップを飾ったのは1993年のことでした。
そのときの私の反応は「NHKも悪いことをやる、これでは民放並じゃないか」というのでした。
ドキュメンタリーのみならずさまざまな番組に操作あるいは編集の手が加えられている、それを前提にこちらは視聴している、しかしNHKは汚いことをしないと、いつの間にか〈無謬神話〉を抱いていました。
けれど、NHKがダメで民放ならヨロシイというのはおかしい。
おかしいと思いながら内部事情に疎い私は、なにか宙ぶらりんの気持ちでいました。
最近このもやもやを晴らしてくれる本に出会いました。今野勉『テレビの嘘を見破る』(新潮新書)です。
今野氏は1936年秋田生。TBCに入社、その後テレビマンユニオンを起こして、数々の優れたドキュメンタリーを手掛けてきた人です。
(2017年8月15日)