【往還集139】27 推敲・続

推敲を止めないのは、自分の作品に執着し、責任を覚えるからにほかなりません。
文学の面からは美談ですらあります。
ところが読者の立場からすると、それではすまされない。
たとえば、まど・みちおさん。
彼は全詩集を出すたびに、いくつもの作品に手を加える。そのためこちらは高い金を出してまた買わなければならない。
もっとも推敲に関しては、宮沢賢治がさらにその上を行く。
賢治がもし長生きしたなら「銀河鉄道の夜」を際限もなく改変していったにちがいありません。
幸か不幸か生前の刊行物は2冊だけで、売れ行きもすこぶる悪かった。
だからいま研究するものは、改変過程そのものに深い関心を向けているのですが、もし売れる作家だったなら読者泣かせ、出版社泣かせだったこと、まちがいない。
非推敲派、推敲派の岐路は、作品が作者から独立したとするか、なお作者に属するものとするかにあるでしょう。
(2017年7月6日)