【往還集139】17 藤井貞文(ふじいさだふみ)

歌人藤井貞文の名を『藤井貞文全歌集』(不識書院)を手にするまで、自分は知らなかった。
なんという不勉強と責められても、いいわけはできない。
けれどもしかしたら同じ人はいっぱいいるのでは。
なにしろ、「鳥船社」という折口信夫を中心とするグループに入っていたものの、歌誌に発表するわけでも歌集を出すわけでもなかった。
経歴の主要な所だけ抽出してみます。
1906(明治39)年長門の国に生まれ、国学院大に入って折口信夫と出会う。国史学者として大学に勤め、『吉田松陰』をはじめとする著作を多く刊行する。1994(平成6)88歳で死去。その娘には歌人藤井常世が、息子には詩人藤井貞和がいる。
外部に発表して歌人としての名を高めようなどと思わず、

「ただ、先生のもとで、歌を詠み、鍛錬することを喜びとしていた」

と常世さんは書いています。
こういう在り方もいいなあと私は思ったのです。
(2017年6月12日)