【往還集139】14 メダリスト

京都産業大学の講演・対談シリーズの中心になったのは永田和宏氏。
記録集が『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)として刊行されました。
登壇者は山中伸弥・羽生善治・是枝裕和・山極壽一各氏。
「何者でもなかった頃」の話はそれぞれに魅力的で、人間世界の的も射抜いている。
一例を山極(やまぎわ)氏の発言から。
チンパンジーは相手の気持ちを乱すことが大嫌いで勝敗を決しないで共存する、勝つと仲間が離れていくことを本能的に知っているーー。
ここからメダリストの話へ転調。

「オリンピックのメダリストたちは驚くほど謙虚です。自分が勝って嬉しいのはもちろんですが、一方で、自分が打ち負かした相手がいることもわかっている。あるいは自分の陰で、栄光の舞台に立てなかった人がいることも知っている。そういう人たちから恨まれたくないという気持ちを、本能的に持っているのでしょう。」
(2017年6月6日)