【往還集139】12 滝

鳳鳴四十六滝。青葉に囲まれた渓谷を流れ下る。

滝のまえに立つたびに、その荘厳さに打たれ、心底から尊敬したくなります。
家から割合近くにあるのは、秋保大滝。
滝壺近くまで下りて見上げると、空(くう)にせり出した水の厚みが一瞬固まる、後ろに迫る水に押し出され、そのまま落下、轟音とともにたたきつけられ、飛沫が散乱する。
もうひとつ近くにあるのは、鳳鳴四十八滝です。
これは高度があるわけではない。広瀬川上流の峡谷を、幾重にも身をくねらせながら滑走する。豪快とはべつの趣があります。
これら二つは名所にもなっていて、人も多く訪れる。
しかしほとんど人影のない滝もあります。たとえば花山の奥地の白糸の滝。
薮をかき分けてやっとたどりついた目のまえに、文字通り白い糸を寄りあわせた清涼の滝がありました。
滝は、人影があろうがなかろうが、有名であろうが無名であろうが、いつでも荘厳な姿でいる。
そのことに尊敬を覚えるのです。
(2017年6月1日)