【往還集138】40 大和類子さん・続

全国で刊行されている結社誌は近年になって衰退しているとはいうものの、いまだかなりの数になります。
私の手にしているのはその一部にすぎませんが、送られてくるたびに注目歌人の作品に目を通し近況も想像します。
類子さんもそのひとり。
去年あたりから精神のバランスの崩れたさまが伝わってきて、心を傷めていました。
そして届いたばかりの4月号には、

「誰の殻かぶつてゐるのか似非人間おののき生きて今雪しぐれ」

「ゆつくりと静かに雪は降りつもり想ひ出のみの一日は終る」

「字が書けぬ歩けぬわれはもう人を卒業したと肩おとし言ふ」

など、心の剥落したような歌が並んでいるのです。
いつわらざる最晩年の心境にちがいありません。
正直なところ、〈人間卒業ぶり〉を目の当りにするのはつらい。
けれどことばにもできない人がほとんどのなかで、歌としてきちんとまとめえたのは、せめてもの幸いだと思っています。
(2017年4月2日)