【往還集138】33 吉本隆明・続

「家族に困ったことがあったからって、楽しいことをやめるという考えはあまりよくない。そういうときはやったほうがいい。もしも、これが伴侶のことだったりしたらそりゃあ違うけれど、君の場合は君が子どもなんだし、お母さんが悪性である可能性はとても低いらしいから、今はそんなこと考える必要はない。」

私はこういう吉本の考え方には共鳴するのです。
自粛ということばがある。
昭和天皇の危篤時、崩御時のしばらくは、全国的に自粛を強いられた。あれはいやだった。
たとえこちらがひどい状態になっても、楽しめる人は大いに楽しんでほしいと私は思っている。
こういう人間観・生活観のほうが、なにか自然であり、しぶとさも与えるのではないか。 
大震災で痛めつけられていた日々、人里を離れては近くの湖へ行き、コブシの花を愛でた。
〈ふつう〉が、まぎれもなくある、それだけのことがとてもうれしかった。
(2017年3月17日)