宮沢賢治は青年時代に、桁はずれというほかない、不可思議な歌を量産しました。
「賢治の短歌」ではなく、「賢治短歌」としかいいようがない。
その正体に接近しようとしてまとめたのが『賢治短歌へ』(洋々社)です。
私はまず賢治歌集が出て以来の論考をかたっぱしから調べましたが、ほとんどに納得できませんでした。
そういう折、エッとおどろく一文に出会いました。高木市之助「賢治と啄木における短歌の問題」で、1947(昭和22)年の段階で発表されています。
それまで高木市之助なる人物を知りませんでした。岩波新書版『国文学五十年』は持っていましたが、すみっこに置きっぱなし。
こんなに早い時期に、これだけ賢治短歌の深奥に迫っていたとは。
古書で検索したら、『高木市之助全集』全10巻がある。すでに過去の研究者なのか、申し訳ないほどのやすい値段。
それでも手元に置きたくて、買い求めたのです。
(2017年3月7日)