【往還集138】24 写真家中村ハルコ・続

荒浜に立つ4人の妊婦の写真。
荒浜に立つ幼児をだっこする婦人の写真。

『光の音』をくり返しくり返し開き、ついに一気に80枚の「中村ハルコを追って 写真集『光と音』の世界」を書きました。「路上」113号に発表したのは2009年4月ですから、8年まえのことです。
もしもっと存えて3・11に遭遇したなら、目覚ましい写真活動をしただろうと惜しむのです。
というのも論の終結近くにとりあげたのは2枚の写真。
1枚目は自分を中心に、妊婦4人が海を背景に立つ場面。
2枚目は出産した幼児をだっこする同じメンバーが同じ位置に立つ場面。
この海はハルコが子どもの頃泳いだ荒浜です。
震災後私は何度もこの海に立ちましたが、そのたびに2枚の写真が浮かんできます。
海、それは太古そのもの、そして新しい生命を育む母胎も海そのもの。
あの日突然噴出した自然の忿怒は何だったのか、中村ハルコならどのようにとらえただろうかと、あまりにも早い退場を、口惜しく思うのです。
(2017年2月26日)