【往還集138】11 活字

冬の蔵王連峰。いくつもの山々が連なり、まるで木版画のよう。

私の視力は小学生のころから、検査をするたびに2・0でした。視力票の一番下まではっきり見える。
2・0以下もあったらさらに見えたかも知れない。
というわけで若い頃は文庫本の小さな活字が好きだった。
大きな活字を読む人を、年寄りくさいとどこかで蔑視していた。
ところが40歳を過ぎるころから逆転。視力は急に衰えはじめ、眼鏡なしでは読めなくなった。
文庫本級のはもうだめ。
どうしても必要なのは拡大コピーするしまつ。
結社誌の作品もそろそろむり。なぜもっと活字を大きくしてくれないんだと、こっそり恨んでいる。大きくすれば費用がかかるから踏みきれない、あるいは編集の係が近眼だから気づかない、どちらかでは。
毎月の誌面はあいもかわらず、小さい活字の歌がずらーっと、長い長い城壁のように並んでいる。
アメリカとメキシコの国境に壁が建てられたら、こういうぐあいになるんだろうね。
(2017年1月28日)