【往還集138】8 古泉千樫

古泉千樫は、斎藤茂吉や島木赤彦ほどには人気がない。
けれどなかなかいい歌がある、いつかまとめて読もうと思っていて、『定本古泉千樫全歌集』(石川書房)をやっと終わったところです。 
今回は上田三四二『鑑賞 古泉千樫の秀歌』(短歌新聞社)も同時並行して読んでいきました。
上田は「はじめに」で、はやくも

「茂吉が私を導き、赤彦が私を鞭うつとすれば、千樫はどうであろうか。それは私を憩わせる。」

といっている。
「憩わせる」はほめことばである反面、ほめていないことばでもあります。
要するに茂吉ほどぐいぐいと押してくるところがない、茂吉は写実と主情の両刀づかいだったが、千樫の場合は

「写実の輪郭が、主情をつつんでくっきりと姿を見せることが、十分には叶わなかった。そこで輪郭と見えるのは、多く型である。」

というわけです。
こういう古泉千樫だからこそ、上田が心を寄せる面もあったのです。
(2017年1月25日)