【往還集138】6 「息子さん」

朝刊を開いていた家内がいきなり笑ったのです。
それは「朝日歌壇」。
歌壇が爆笑を呼ぶなんて。

「夫のことを「息子さん」と言ったあの小林という人を絶対許さない」(鈴鹿市 森谷佳子)

で、永田和宏氏と佐佐木幸綱氏が採っています。
介護施設に夫が入所した、介護職員に小林という人がいる、訪問したときその職員が「この方は息子さんですか」と聞いた、つまり自分は老けたばっちゃんだと見られた、こんな失礼なやつ許さないーという意味でしょう。 
しかし冷静に考えれば、別の意味とも受けとれます。
長く連れ添い立派な人格の持主として疑わなかった夫が、施設にきて「息子さんですか」と子ども扱いされている。
そのことに悲しみと怒りがこみあげてきたのだと。
私の叔母は長寿の夫を入院させたとき、看護師に赤ん坊扱いにされている現場にショックを受けて、早々に退院させました。
その例が頭に浮かんだのです。
(2017年1月16日)