【往還集137】50 海軍の叔父

私の記憶は2歳半にはじまる。
年齢を特定できる動かしがたい〈証拠〉があるのです。
父親の弟に四郎叔父がいました。
海軍に召集されたのち、軍人募集の命を受けて釜石まで出張。
その帰途、花巻近くの駅似内(にたない)で空襲警報が出る。
軍人たる自分は民間人の全員退避を見届けなければならない、
退避終了、
降りよう
としたとたん、直撃を受けて即死。
終戦3日まえのこと。
これら経緯は後になって聞いたこと。
そんなこととも知らず、母親と手をつないでカラタチの垣根沿いを歩き、寺に入りました。
海軍姿の叔父の写真。
読経にあきあきしたころ、いきなりジャーンと大音響。
驚きのあまり泣き出す自分。
本堂の外へ連れ出す母親。
今でも葬儀の最中に、ジャーンが鳴るとドキッとします。
終戦後、見知らぬ女性が訪ねてきました。

「四郎は亡ぐなりすた」

と告げると、ハンカチを目に当てて、帰っていったそうです。
(2017年1月4日)