
秋保温泉の奥に「工芸の里」
があります。そこを訪ねたおりには「玩愚庵(がんぐあん)」に立ち寄ります。
仙台商業高校に勤務していたとき生徒だった、鈴木昭君が父親のあとを継いでやっているのです。
もう57歳で、内閣総理大臣賞も得る腕前ですから、昭君などとはいえない。
けれどやっぱり昭君。
店に入ると、「このごろはどんな創作に挑んでいる?」と聞きます。
一世代まえまでのこけし工人は伝統を守るのが主流でした。
昭君も伝統は守りながら、他方ではさまざまな創作こけしを考案しつづけています。それを見るのが楽しみです。
私はこけしを目のまえにしながら、よく短歌のことを考えます。
古来型が決まっている。型が窮屈だといって破調に向かったり、短歌そのものをやめてしまったりする人もいる。
しかし型を守りながら、自分や時代の新しさを表現しようとする歌人もいる。
そこがこけしと似ているのです。
(2017年1月30日)