心のぬくもる話を読みました。詩誌「左庭」35号の岬多可子「彼女の日々」。
岬さんには小児科をやっている友人がいる。幼いころから病弱だったことで、早くから医師をめざし、希望がかなった。
ところが脳梗塞を発症し、そのまま勤務先の病院に入院。
言語の中枢がやられる。
いったん復職するが再度発症し、ことばがほとんど出なくなる。
が、医師の立場から、ことばを再獲得する過程をじっくり冷静に観察。
ふたたび職場にもどれるまでになり、乳児健診もする。そのときのことを友人はいう、
「言葉が出にくくなった分、赤ちゃんと意思疎通できるようになった」
そういうことがあるんだねえと胸が熱くなりました。
人は自分の弱さを起点にして他の人を理解すぐことができる。
強い人には見えないところも感じとることができる。
弱さはけっしてむだなことではない。
これは自分自身への弁護あるいはエールでもあります。
(2016年12月29日)