スベトラーナ・アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り 未来の物語』(岩波現代文庫)を開きはじめた私は、胸を鷲掴みにされた気持ちでいます。
冒頭に出てくるのは消防士として原発に駆けつけやがて亡くなった、その妻の聞き書き。
一瞬にして暗転するすさまじさは福島の場合も本質的に変っていない。
福島でもあと10年後、20年後には書かれなければならない。
敵対・愛憎を超えて人間の深層が見えてくるには、それだけの歳月が必要。
スベトラーナ・アレクシエービッチさんは「見落とされた歴史についてー自分自身へのインタビュー」に書いています。
これはチェルノブイリについての本ではない、
「なにかを理解するためには、人は自分自身の枠から出なくてはなりません。感覚の新しい歴史がはじまったのです。」
と。
通常のドキュメントに終らないその域を超えたもの。私も、そのことを考えはじめています。
(2016年12月25日)