【往還集137】33 「ヒアレイン」

2016年12月12日
これはほとんどどうでもいい話なので、何の期待もしませんように。
歯科医に行って待合室にいました。
自分のまえに二人の先客が。見るからに90過ぎのご夫婦のよう。
その奥さんのほうが手提げ袋をもそもそ探っていましたが、やっと見つけたらしく取り出しました。
水色模様の、小さな目薬。
顔を上げて、最初に左、つぎに右へ注していきます。
「ヒアレイン」
だとすぐにわかりました。私もドライアイになりやすいので、カバンに入れて持ち歩いています。
加齢とともに体内の泉は枯れはじめ、目も乾燥してひりひり痛んでくる。そういうときに雫として送りこむのです。
ところで私も待合室の温かさにひりついてきた。治療に入るまえに注しておこうと「ヒアレイン」を取り出しました。
その奥さん、ちらっと見て、そっと笑んだのです。

「あらまあ、おんなじ仲間がいるわ」

と思ったにちがいありません。
この話はこれだけ。