2016年9月27日
福島発のすぐれた歌集が、5年の熟成をかけてやっと生まれてきました。
佐々木喜代子さんはいわき市在住で結社誌「未来」に所属、年齢不詳。
「あの原発事故から五年、杳としてわからぬものをかかえながら、フクシマはなおフクシマであり、これからもずっとありつづけ、人々は詠み紡いでゆくことでしょう。」
と「あとがき」にあります。
すぐれた作品のなかから、スペースのある限り紹介します。
「ガラス戸をいち枚へだてたちまちに黄のクローカス界を異にす」
「同情と忌避の視線の先に生きふくしまびとは深くマスクす」
「日常へ日常へと揺りもどしゆくバネを持ちをり暮しといふは」
「ああここにも仮設住宅建つならむ記憶ひらたく均されてゆく」
「水とふは経めぐるものを 事故の地に水になれざる水増殖す」
「咎を負ふもののごとくにふくしまの群衆としてただよひてをり」
「残されし我の時間にふくしまの劫初の空は戻りては来ず」