【往還集136】28 山小屋のソーメン

2016年8月1日
仙台商業高校に勤めていたとき、山岳部の顧問になりました。
ある年の夏、山形県の朝日連峰を5日かけてゆったりと縦走する計画を立てました。
私は山形方面は不案内でしたが、もう一人の先輩顧問が山形出身で、山岳に関してはプロ級でしたからこちらは安心。
連日の猛暑となりましたが、濃緑の峰々をたどる心地は格別。
以東岳をきわめたのち、山小屋に泊まることになりました。
すると小屋のご主人が、ちょうどソーメンと胡瓜が冷えたところだといって、谷川につけている笊を持ってきてくれました。
そのときの舌ざわり、喉ざわりの極上だったこと。
以来、真夏になると、何度でもソーメンをゆでたくなります。麺のころあいをみはからって笊へ移し、冷水でもみ洗いする。それを素手で、ざっくりと皿に盛りつける。
この夏もすでに、何度目かのソーメン。
朝日連峰縦走のかの夏が、さわやかによみがえってくるのです。