2016年7月21日
宮柊二は27歳の日に山西省へ出征しますが、現地で病気になり、5か月ほど入院生活を送ります。
それは前線を離れた読書の機会でもありました。
なかに、費孝通(ひこうつう)著、市木亮訳『支那の農民生活』があります。
日本軍と対立している中国、その農村を研究対象にした本を、柊二はどんな気持ちで読んだのでしょうか。少なくとも敵対の意識はない。
1939年刊行のこの本を古書でやっと見つけました。
読んでみると、かなり優れた研究書で、
「科学はしかし自然的要素がよく人間の努力によつて統御され得る限りにおいてのみ支配する。」
というような文明観も散りばめていました。
この一文ですぐ思い起こすのは原発問題です。
人間の力で統御できないのに手を出してしまい、多大な被害を与えている。だのに後退もできない。
人類の行く末を考えるのは単なる観念論でない、そういう時代に放り出されているのです。