【往還集136】23 抒情というものの深さ

2016年7月15日
書棚を整理していたら「読書ノート」が出てきました。
へえ、こんなのがあったのかと我ながら驚いて開いてみたら、ノートの色は早くも変色。 
以前は、本や新聞を読むたびに「これは大事」と思ったのは写していました。それも、いつしか忙しさにかまけて疎かに。
あちこち読んだら、なかなかいい文があるではありませんか。そのなかから3つだけ紹介します。
まず「群像」2003年11月号の加藤典洋「無人国探望記」から。『吉本隆明全詩集』の感想として

「吉本さんの戦前に書いた初期詩篇を虚心に読んで、わたしに感じられるのは、吉本さんの詩がどう、という以前に、詩というもののガラの大きさである。抒情というものの深さ、と言ってもよい。それは、海面は大荒れに荒れても海底はほとんど動かない、そういう深海の不動さを思わせる。」

とあります。
吉本詩に発しながら、詩歌の本質を透視していると思ったのでした。