【往還集136】14 便利に呼び出されて

2016年6月19日
斎藤史の『風翩翻』に、

「携帯電話持たず終らむ死んでからまで便利に呼び出されてたまるか」

があります。
ケータイの流行りはじめた時期の歌。
「いかにも斎藤らしい。時流に流されることを拒むその心意気やよし

と評価する人が多かった。
けれど私には今日まで、後味の悪さがのこったままです。
情報機器は急速に進化し、旧い世代はたちまち置いてけぼりを食う。
いまのいま新機器になじみ謳歌している世代も高齢化したときは同じことになる。
つまり年齢とともに新しい局面に出会っても、吸収するのが億劫になる。
こういう事態は、永久にくり返されていくのではないでしょうか。
そのとき置いてけぼり食ったことに居直るか、後退してしまったことを認めるかの分岐点が出てくる。
私なら居直ることをしない、後退も受け入れる、そのうえで、これからどうなるのだろうということに、興味津々でいたいと思うのです。