2016年6月7日
高野公彦は1941年生れ。
永田和宏と小池光は1947年生れ。
私が若い日から頼みにしてきた同時代歌人です。
その彼らが近年次々と奥さんを亡くしています。
永田氏の奥さんは河野裕子だから、いやでも公表せざるをえない。亡妻歌もエッセイ集も多くなる。
小池氏も最近、『思川の岸辺』という心打つ一冊を出しました。
高野氏はどうか。
数年前の「コスモス」に、逝去を匂わせる歌が載りました。事情を知っていそうな人に尋ねたら「大袈裟にしないようなので」ということ。
いかにも高野氏らしいと、こちらもそれ以上は突っこみませんでした。
最近『無縫の海』が刊行され、
「出歩かず贅を好まずコーラスと碁を楽しみし六十九年の生」
をはじめとする、何首かの亡妻歌に接することができました。
公表するのがいい、わるいではない。
〈わたくしごと〉として、ひっそりと送るのもひとつの在り方だなあと思ったのでした。