【往還集135】45 喜びや幸せ

2016年5月2日
前章のつづきを少し。
私は視力衰弱を診てもらおうと眼科へ行き、新しく眼鏡を作ってもらうことにした。
その技師の人と話していているうちに、彼も閖上近くで被災し、職場も喪い、しばらく他県に住んでいたとわかった。

「また復興なんてできないですよ、無理ですよ」

と彼は実感をこめて重く語った。
それでも仙台へ帰ってきて、生活を営みはじめている。
こういう人々が何と多いことか。
ところで神山さんの本でとりあげておきたい章がもうひとつある。
「尊敬と愛と自由と幸福」。

「人生は悲しく、つらいことばかりではない。政治を憂え、国家の現状に絶望的になり、経済も社会もまったく先がないように思われることもあるのだが、日々の生活のなかで、何でもないことに喜びや幸せを見いだしているのも、私たちの人生ではないだろうか。」

神山さんもこういうことを、何の衒いもなく口にできるようになった。ほっとする。