2016年4月23日
「世界」2016年3月号に、2015年ノーベル文学賞受賞記念講演「負け戦」が掲載されている。スヴエトラーナ・アレクシエーヴイチさん。
そのなかの一語「超文学」に、私は強く引きつけられた。師であるアレシ・アダモヴイチのことばとして語られている。
「二〇世紀の悪夢について小説を書くことは冒瀆だと考えていました。作り事はできない、真実をあるがままに提供するしかない、「超文学」が必要だ、証人が自ら語らなければならない」(沼野恭子訳)
と。
私は「超文学」という語のあることを知らなかった。
けれどこの一語に釘付けになったのは、すぐに思い浮かぶ1篇があったからだ。
宮柊二『山西省』。あれは歌集ということになっているが、一文芸形式を超えている。それこそ、「真実をあるがままに提供するしかない」思いで作られ、編集された。
『山西省』を超文学として見直す、私にとってこれは新たな視点だ。