【往還集135】27 セミのこと

2016年2月9日
もうひとつ、いまになってはじめて知ったことを書く。
それはセミのこと。
夏の朝は、ベランダに立ってヒグラシの大合唱を聞くのが習い。不思議なことにちょうど4時に、森のどこかで一匹が「ジッ」と声を立てる。それに誘われてつぎが鳴き、ついには全体が蝉声に包まれる。
このセミに雌雄があり、鳴くのは雄だということをいまのいままで知らなかった。
『続 まど・みちお全詩集』を読み進めていて、「蟬」にきたときのこと。まどさんは虫にも植物にも詳しい人だった。
「あ、蟬が鳴いている!」とはじまる。
「淋しく立ち去ろうとする胸の中で/突然はげしく小さなアコーディオンが/のびちぢみしはじめる/どんなにのびちぢみしてみても/声の出ることのなかった/あの少年の日のメス蟬の悲しい腹が┅」と声のない雌を思いやっている。
蟬時雨も男性合唱だったとは。
こんなこと皆さんはとっくに知っていたでしょうね。