【往還集135】26 雪のこと

2016年2月9日
いくら歳を重ねても、はじめて知ることも多く、ひそかにおどろいたり恥じ入ったりする。
私は岩手に生れ育ったから、雪のことは知り尽くしているつもり。
子ども時代は多雪期で、道路は圧雪状態になり、馬橇が鈴を鳴らして走る。その後ろに乗せてもらうのは、楽しかった。
初雪の朝は、一夜にして純白世界に変貌したことに昂奮して、裸足で庭を駆け巡った。雪の清らかさ、ふくよかさは、まさに天からの贈り物。
話は一気に飛ぶが、大震災で水道が使えなくなった日々、雪は大いなる助けとなった。トイレは水洗式だから水がないと使えない。さいわい庭には来る日も来る日も雪が積もる。それを風呂桶に運びこんで溶かし、トイレに持っていくことをはじめた。
なにしろ天からの贈り物、澄んだ水になることを疑わなかった。
ところが汚水!
地上へと降りながら、空気中の汚れまで吸いこむのが雪だとはじめてわかった。