【往還集135】21 殲滅(せんめつ)

2016年1月12日
学生になって仙台にやってきた1961年は、安保闘争後の余熱が、まだまだ燻っていた。
大学構内に入ると墨で大書した立て看板すなわち立看がずらりと並んでいる。まるで戦国の砦にまぎれこんだよう。
なかにたっぷりと墨を滴らせた「殲滅」一語があった。
「せんめつ」と読み、皆殺しにして滅ぼすことの意味―とは、あとで調べてわかったこと。
それを目にしたとき、「講義にもほとんど出ないのに、よくこんな難しい漢字を知っているものだな」と感心した。ほとんどプロ級の学生運動家が、何人もいたのである。
以来この一語が妙に記憶に留まりつづけてきたが、旧約を読み進めている昨今、「殲滅」が何度も浮かび出てくる。
『十二小預言書』の「ゼファニヤ書」から。

「ヤハウェの憤りの日に、/全地はその激情の火で焼き尽くされる。/まことにヤハウェは破滅を、まさに恐怖を/この地に住むすべての住民に臨ませる。」