【往還集135】18 ひとり死

2016年1月7日
古来、不老不死は人間最大の憧れだった。老いたくない死にたくないいつまでも若いままでいたい。
この願望に応えるべく医術・化粧術その他の○○術が進化してきた。
そのかいあって平均寿命はのび、一昔前では考えられないほどの若さも保っている。
私は現職のとき三者面談を何回もやった。母親への挨拶をかねて
「お姉さんですか?」
と尋ねると、すごく喜んだ。
半ばはお世辞だが、半ばは本気で。
それほどまでに40代と20代の区別はつきがたくなった。
しかし永久の不老不死はありえない。誰もが平等にいずれは死ぬ。
そこで気づくのは、長寿へ向かう医術その他は次々と進化するのに、死に方については疎かにされていることだ。
一人で亡くなると「孤独死」として哀れがられる。
が、静かに生を閉じる「ひとり死」もいいものではないか。
苦痛なしに、自分の意志で終幕を迎えられるなら願ってもないことではないか。