【往還集135】14 好色

2016年1月3日
二宮冬鳥は医者である。院長も勤めたことがあるから半端な医者ではない。
だが好色でもある、医者と好色を「だが」で繫ぐ根拠はなにもないけれど。
医者かつ好色の第一人者は茂吉。
二宮も負けてはいない。
好色とは、人格まで踏み込まず「女性」という外見を男性の目によってとらえることをいう。
『青嚢集』から。

「冬されば電車の中にをとめごの腋間の草をみることもなし」
「さにづらふをとめのともがわが妻にくらぶべくなくあまた美し」
「おほよそは生殖機能そなへたるをみなごなればかなしきろかも」

電車で窃視するおとめごの腋の毛によほどエロスを覚えたらしい、何首も作っている。 
2首目は、妻が読んだら機嫌をそこねそうな歌。
3首目には医者としてのまなざしも介在する。
『黄眠集』には

「美しき車中のをとめに安らぎぬ美しくなき時もやすらぐ」

もある。女性側からしたら「よけいなお世話!」と抗議したくなる歌。