【往還集135】12 別姓・続

2016年1月2日
黒川創『京都』は4篇から成る短編集で、どれも京都を舞台にしている。
さすが京都出身だけあってその地の描写がこまやかだ。
しかもいわゆる観光地的京都ではなく、底辺層の町や人々の襞深くへ入りこんでいる。 
そのなかの一篇「深草稲荷御前町」には、韓国籍の西山徹と妻坂田由紀子が登場する。二人には悠太、梨花の子どもがいる。由紀子は、家族全員が「西山」にするためにはどうするか、家裁へ相談に行く。
そのことを夫トオルへ告げると、韓国では結婚しても別姓だ、なんで改姓の必要があるかと腹を立てる。
由紀子は「家族が同じ姓になってへんのって、悲しいでしょう。子どもらかて、かわいそうやし」と反論する。
ふたりは結局離婚してしまうのだが、「家族が同じ姓になってへんのって、悲しいでしょう」に家族主義とはまた別の思いを感じ、哀切さとして残った。
無姓賛成派の自分としては、矛盾してしまうが。