【往還集135】10 大晦日のサイカチ沼

湖面の氷もほんのわずか。
遊歩道を巡っていくと、トンネルがある。現在は、通り抜け出来ない。

2015年12月31日
大晦日の今日、サイカツ沼をめぐってきた。この冬はまだ、積るほどの雪は降っていない。いつにない暖冬で、湖面の氷もほんのわずか。カモの群れがクワクワと鳴きかわし、静かな波紋を作る。
対岸の木々の幹は、日差しを受けてしろがね色を帯びる。
大晦日というのに、サイカツ沼は少しも騒がない。
あちこちに点在する釣り人たちも、少しも騒がない。
この一年、世界ではつぎつぎとテロが発生、内戦に追われる難民も命がけで脱出した。
国内に目を転じても、大災害や血なまぐさい事件が多発した。
岸辺に腰をおろして、小波の行方を追っていると、すべてが遠い世界の虚構のような気がしてくる。
だが、もしかしたら、目のまえの静寂のほうがじつは虚構かもしれない。
現実と虚構を識別する方法は、なにか。
それは古今東西かわらず、指でつねってみること。
で、つねってみたが、冷気にかじかんであまり感じないのだった。