2015年12月12日
川口常孝といえば『兵たりき』の歌人。学徒兵として大陸に出征し、敗戦後にその体験を歌として再現させた。迫真性のある戦争詠は、質量ともに出色のものだ。
最近、中根誠『兵たりきー川口常孝の生涯』が刊行された。
早速とりよせ、目下読んでいる最中だ。581頁にも及ぶ大冊で、評伝をはみ出すまでに詳細だが、こちらがはじめて知る事項もある。
その一つ。学生壮行会で早大文学部教授代表煙山専太郎が挨拶する。
「軍隊というところは野蛮なところである。諸君の教養が、これをいくらかでもよくすることができればと期待する。諸君、決して死んではならない。血気にはやったり、変な責任感にとらわれて死を急いではならない。ぜひ元気で帰ってきて欲しい。」
これは、慶応大教授白井厚の最終講義「太平洋戦争と大学」で紹介されている言。実際の記録でないのは惜しい。
煙山教授はその後無傷ですんだのだろうか。