2015年12月1日
大震災から5年たとうとして、「あのこと」は本当にあったのか夢だったのかと、混濁することがある。
私の住む住宅地は、特に震災以後建築ブームになって、つぎつぎに家屋が建っている。散歩がてら庭先を見ると、車のナンバーに「福島」「いわき」「岩手」がまじっている。大型店の駐車場に行ってもやはり同じだ。
そういうことにすら感覚がマヒしていた昨今、島田幸典歌集『駅程』に
「名古屋市の駐車場ゆえ車みな名古屋ナンバーの札つけてあり」
に出会った。
名古屋市だから名古屋ナンバーはあたりまえだ。
だが仙台の各所に、近隣県のナンバーがまじる。それはあたりまえではないのだと、改めて思いおこし、胸中に痛みを覚えた。
他県ナンバーは、ただとまっているだけで、声高になにかをいうわけではない。
けれど、ここにたどり着く間には、どの家にもどの家族にも、つらく大きなドラマがあったにちがいない。