【往還集135】2 渋民行

2015年11月30日
小池光の『石川啄木の百首』を読んでいるうちに、渋民のことを思い出した。
水沢高校時代、部活は文学部に所属。夏季には研修旅行をする。
その年は渋民行だ。顧問の先生2人と部員20人が出発。東北線を北上し、渋民駅で降り、さらに歩いて渋民村へ。
宿泊は渋民小学校の予定。
ところが着いたら、泊めることができないと返事を出したはずだがと、学校の先生。いや受け取っていないと顧問が押し問答(あとでわかったが返信はがきをたのまれた生徒が投函を忘れていた!)。
やむなし、急きょ隣の宝徳寺と交渉し、泊めてもらうことになった。
啄木の使った部屋もそのまま保存されている。
夜になり、自分たちは毛布を敷いて本堂に雑魚寝。
翌朝、境内に出ておどろいた、眼前に巨大な岩手山がそびえ、彫の深い襞を刻みつつ裾野をいっぱいに広げている。
少年啄木は、この風景を見ながら育った。感極まる瞬間だった。