【往還集135】1 「お孫さんをそこに」

2015年11月22日
「往還集」をはじめたのは96号。
以来12年たつ。
最初は字数制限なしだったが、しだいに題もふくめて400字に限定。
折々のことを自由に綴るつもりが、とかく重い話題に傾きがち。
ここいらで心機一転、明るい「往還集」にしようではないかと思い立つ。
が、やっぱりそうもいかない。
「駱駝の瘤」10号に五十嵐進が「農をつづけながら2015秋」を掲載している。五十嵐氏は福島県喜多方の人。「東京新聞」に登場した環境リスク学者中西準子の発言を読んで、投書したという。
中西は、なるべく早く帰れるような条件と根拠を探って数値を示している。それに対して「先生、ご自分のお孫さんをそこに住まわせられますか」と問う。
科学者も政治家も数値は示す。
だが自分も家族も孫も共に住むとはいわない。
つまりことばに身体性がない。
ここを欠落させた言説は、住民をけっして納得させないということだ。