【往還集134】38 秋山牧車

2015年10月13日
雁部貞夫『『韮菁集』をたどる』を読んでいて、秋山牧車の名をはじめて知った。本名は秋山邦夫、陸軍報道部の責任者。土屋文明、加藤楸邨一行を大陸に送り出したのも秋山という。
その1か月後秋山自身がフィリッピンへ送り出され、俳人秋山牧車として戦争詠を作る。『山岳州』にまとめられているいうので、とりよせて読んでみた。
戦地はすでに敗色濃く、苦しい戦いを強いられている。

「蛍いきいき砲声に追いつかれたり」
「炎日を仰ぎて紛れなく死にき」
「稲妻や縦列消えてまた見ゆる」
「草の芽の幕舎に萌えてひもじさよ」

4句目は収容所に入ってからの作。
このような迫真性ある戦争句を作る俳人を、いまごろになって知ったとは。
戦争詠とはかぎらない作品にも、はっとするのがつぎつぎとある。

「吸うと見え吐くと見えたり蛍闇」
「美しや稲妻虹を切りくだる」
「激湍や宙へとぶとき蛇の棒」
「雲の峯音たてて貨車つながりぬ」