【往還集134】35 心がわり

2015年10月5日
藤島秀憲は「心の花」の歌人。歌文ともに読ませる力がある。「心の花」10月号の発表歌に

「木の下に梯子をおさえいる人の心がわりはおそろしからん」

を見つけたとき、わが心は怪しく感応した。「心がわりはおそろしからん」この一瞬にして起きる逆転劇、日常のあちこちに偏在しているではないか。
たちまち下の句を拝借した歌ができたが、そのなかから3首だけ紹介したい。

「カミソリで喉剃りくるる理容師の心がわりはおそろしからん」
「包丁をもて調理する家妻の心がわりはおそろしからん」
「今日に出す給食作るおばさんの心がわりはおそろしからん」

1首目、映画「カラーパープル」に出てくる、妻が凶暴な夫にカミソリをあてる場面ながら。2首目、すぐ手近にある家庭の凶器は包丁。3首目、学校給食は狂いが生じたときが怖い。大量毒殺につながる。
いずれも人の世の信頼によって、事なきをえていると改めて思う。