【往還集134】33 「草藏」

2015年9月28日
句歌詩帖「草藏」の発行人は、佐々木六戈(ろっか)。「開扉の辞」に

「ねがわくは/句と歌と詩の言葉が/草ほどの光栄を纏うて/われらが書の藏に/入らんことを」

とある。
3分野の総合誌を企図し、本人も毎号句と歌と詩を掲載する。
私はどちらかというと句がいいと思っている。
が、なによりもおどろくのはその博学ぶりだ。古今東西の文物を跋渉する。西洋関係にきわめて弱い自分は、グノーシス、ウィトゲンシュタイン、フランシス・ボンジュなどのカタカナ名が出てくるだけで、もう降参。
と、弱気を吐きながらもエッセイを読んでいると、折々なるほどと深く納得することもある。
第83号の「草のとざし扃」は、

「名があって、物が生まれる。物があって、名が生まれるのではない。」

とはじまる。
人間は物を名づけることによって世界を獲得した気でいるが、じつは名づけられないままの膨大な世界に取り巻かれているのだと私も思う。