【往還集134】18 戦後70年

宮柊二『晩夏』に「たたかひを知りたるゆゑに待つ未来たとへば若草の香(か)のごとく来よ」がある。
この歌をまえに、はたしていま「若草の香」が広がっているのか、むしろその逆ではないかと思ってしまう。
戦後70年を迎え、テレビもずいぶん戦争特集を組んだ。大本営化の危ぶまれるNHKも、かなり掘り下げた番組を制作してくれた。ふだんは〈内部検閲〉に締め付けられている制作側も、この機会を逃さじと頑張ったにちがいない。
おかげで埋もれていた新たな事実も、かなり知ることができた。
こうして8月15日も過ぎたが、私の心中には「なにかおかしい」という気持ちがのこった。
その理由がやがてわかった。NHKも民放も、番組の多くは沖縄、原爆、空襲、降伏など国内の動向が中心、日本軍が海外で仕出かしたことについては欠落している。
この両面を掘り下げてこそ、はじめて戦争の実態が浮かび上がるはずなのだ。

(2015年8月16日)