2015年7月16日
岡崎康行散文集『曇り硝子』の「水郡線に乗る」。
郡山市で短歌会があった折会津地方の人が「福島県がこんな迷惑かけて」と口にしたという。
また伝聞ながら東京の新入社員歓迎会で福島出身といったら「ああ、いま全国に迷惑かけているところか」と反応されたという。
もし本気でいったのなら許しがたいが、ジョークとする受け止め方もありうる。
5月に宮古市でハートネットTVの「震災を詠む」の収録を行った。応募作に
「同級生〈津波のヤツラ〉とつぶやきくやしさにじむコップ酒飲みぬ」
があった。
同級会で津波の犠牲者を悼む場面だ。そのときの〈津波のヤツラ〉は差別語かといえばそうではない、同級生ゆえの親愛と哀悼の気持ちが含まれる。
福島の場合も私はジョークとみたい。
これだけの度量がなければ、被災圏のものの心中には怒りばかりが溜り自らを磨滅させてしまう。
抵抗に必要なもの、それは静かな力だ。