2015年5月30日
賢治本には〈悪書〉といわれる書物がある。めちゃくちゃに賢治批判をする本。たとえば吉田司『宮沢賢治殺人事件』。荒川洋治にも〈悪詩〉がある。今回の講座ではそれらを最初にとりあげたい。〈賢治=善〉の構図には自分だって批判的だから。それにしても〈悪書〉の存在は、逆に賢治の巨きさを照らし出すのだ。
月: 2015年5月
【往還集133】62「声」
2015年5月30日
賢治講座を担当してから9年目。今年は「ポラーノの広場」をとりあげようと、準備の最中。なにしろ自分より詳しい人がぞろっと受講するのだから、こちらは受験生になった気分。可能なかぎり資料に当り、作品を読みに読んで自分のイメージをつかんでいく。それでも謎の部分はいつでも残ってしまうのだ。
【往還集133】61「イノシシ軍団」
2015年5月30日
畑のことでお世話になっている農家の方が除草作業を手伝ってくれる。終ると軽トラに山と積んで運ぶ。このままにしておけば堆肥になるのにーとは素人考えだった。草が腐るとミミズがわんさと湧く。それを嗅ぎつけてイノシシ軍団がやってきて、作物まで平らげていくのだと。森の獣たちもいまや脅威だ。
【往還集133】60「ぼろ船」
2015年5月28日
この頃、ぼろ船に乗っていると錯覚することがある。目下、国会では集団的自衛権をめぐって論戦中。自衛隊が危険になったら撤退させる?笑止笑止とホワイトハウスが笑っているではないか。福島原発の責任をなぜ検察は追及しない?なぜ再稼働へ突っ走る?目先だけ繕って、水を掻き掻き漂流するぼろ船。
【往還集133】59「占領」
2015年5月27日
子ども時代、家の隣は警察署。ジープでやってきた米兵が「ハロー」の一声で革靴のまま上りこみ、机上に長足を投げ出す。縮こまりニカニカするだけの署長さん。子どもながらに、戦争に負けるとはこういうことなんだと痛いほど知らしめられた。以来現在に至るまで、日本は完全なる独立国となっていない。
【往還集133】58「20m美人」
2015年5月26日
一緒に選に当った小島ゆかりさんについても一言。若い日の小島さんは初々しい美人。歳と共に小皺が出てきたが、5m離れると若いままなので5m美人と命名。さらに歳を重ねて20m美人。こういう失礼なことをいっても、いつもニコニコしてくれる。最近自分の老眼度があがり、再び1メートル美人に。
【往還集133】57「山と空の声」
2015年5月26日
今回のゲスト出演者に福田こうへいさんがいる。彼は岩手県雫石出身の演歌歌手。初対面ながら、鼻筋の通ったいい相貌をしている。CDをいただいたので帰宅してから聴いてみた。テレビでは折々見ていたが、改めて聴く音声(こわね)は澄明そのもの。広大な岩手の山地と、広大な虚空、その空間と呼応し合う声だった。
【往還集133】56「歌から唄へ」
2015年5月25日
「震災を詠む」の企画にたずさわって4年目。今回寄せられた歌は、個々の傷みからある共有を求める方向へ変化している。「流されし人百には百の物語こぼさぬやうに抱(いだ)きて前へ」曲が付けばそのまま演歌としても通用しそう。4年の歳月は、亡き人の魂を鎮め、さらに個から共有への通路を用意しはじめた。
【往還集133】55「北上山地」
2015年5月25日
昨日はEテレ「震災を詠む」の収録で岩手県宮古へ。盛岡からマイクロバスで北上山地のど真ん中を走る。行けども行けども厚い緑、折々フジの花や渓流。残雪の早池峰山が、ほんの一瞬。地図で見ればほんのわずかの距離なのに、どうしてどうして。やがて渓流の幅が広がり、家が現れ、人の住む町となった。
【往還集133】53「ムーニー」
2015年5月21日
孫が泊まりに来る。おむつを買いに。店員さんに「おむつはどこですか」とたずねると案内してくれる。そこは介護コーナー。「ムーニーがほしいんですけど」というとベビーコーナーへ。店員さん、本人がすると思ったかそれとも親の介護と思ったか。今や幼老共に使い捨ておむつの時代。が、両用はまだない。