鏑木連(かぶらぎれん)氏の「賢治さんの存在証明」(「イーハトーブ会報」第50号)を読んでいるうちに、なんだかこっぱずかしく(きまりが悪く)なってきた。
鏑木氏は昨年『イーハトーブ探偵賢治の推理手帳 Ⅰ』を刊行した。賢治を名探偵役にした、ユニークなミステリー。
はじめて花巻を訪問したのは25年まえだという。
「新花巻駅に降り立ったときの風の感触は今も頬が覚えています。やっと訪れることが出来たという思いと遠い昔に来たことがあるかのような懐かしさを感じました。」
なかなかいい文章ではないかと思う反面、やはりこっぱずかしい。
岩手生れの自分は、この周辺をくさるほど歩いている。新花巻は、新幹線駅とはいえ、ただの地方駅だ。冬は飛びっきり寒く、夏は飛びっ切り暑い。
けれど憧れをいだく人は、「遠い昔にきたことがある」とまで感触してくれる。
ありがたいやら、こっぱずかしいやら。
(2015年4月4日)