【往還集132】32 忘れること

忘れること自体はけっして悪いことではない。善とか悪とかをこえた自然現象ともいえる。
だから4年もたてば記憶から薄れることもありうるし、こちらだって生々しく甦っていたのでは心身がもたない。
だが、忘れることを強いられる、策謀されるとなれば事はちがう。
目下仙台を会場に国連世界防災会議が開かれ、明日閉幕する。
その一会場となっているメディアテークへ行ってきた。

「これは、なんだ?!」

が自分の第一印象。
3・11といえば津波と原発事故。そのうちの後者が小さい扱いしか受けていない。開会時の首相挨拶も同じ。
これはどういうことだとはじめは訝しみ、しだいに怒りが込み上げてきた。
国連が避け、政府も避け、つまり記憶からの抹消を策謀するこの動向。
さすがにひとつの部会からは批判が相次いだ。
忘れることを強いようとする、巨大で得体の知れぬ力、それが世界会議のどこかに潜んでいた。
(2015年3月17日)